通信制高校の卒業率と進路:卒業に必要な要件と、進学先・それぞれの進学率

通信制高校へ入学を考えるときには、「本当に卒業できるかな」と不安になることもあるもの。

通信制高校に入る人のきっかけはさまざまで、普通の高校(全日制高校)での友人関係や勉強が理由の場合も多いです。そのため卒業のハードルはそれほど高くなく、基本的なことをこなせば卒業できます。

ここでは「通信制高校の卒業率や進学率・進学先」について解説します。

卒業率が90%を超える通信制高校は多い!卒業に必要な要件を確認

通信制高校の卒業率はホームページに載っていて、90%を超えている学校は多いです。

普通の高校(全日制)が学年制という制度なのに対して、通信制高校は「単位制」。卒業に必要な要件は、下のようになっています。

【通信制高校の卒業要件3つ】

  1. 通信制高校に3年以上、在籍すること(転入・編入の場合、前の高校の期間も含む)
  2. 74単位以上を取ること
  3. 「特別活動(ホームルーム・修学旅行・文化祭など)」で、30単位以上を取ること

この3つを全てクリアすると、通信制高校を卒業できます。

ちなみに通信制高校を卒業するときに取ることができる「高卒資格」は、全日制の高校と同じもの。つまり通信制高校の卒業だからといって、不利になることはありません。

通信制高校で勉強する内容は基本が中心。きちんと取り組めば、普通に卒業できる

上の要件だけを見ると、人によっては

  • 「74単位って、けっこう多いよね?大丈夫かな・・」
  • 「特別活動で30単位って、大変そう・・」

のように感じるかもしれません。

ただ、通信制高校で勉強する内容は、基本が中心。全日制の高校で学ぶような難しい内容は少ないため、きちんと取り組めば単位は取れます。

また、特別活動も「特別」という言葉に引いてしまうかもしれませんが、ホームルームや文化祭などのため、「参加すればOK」ということが多いです。

通信制高校に入学するきっかけは、人によってさまざま。その中には、全日制高校での生活が上手くいかなくて選んだ人もいます。

通信制高校のスタッフもこうした事情を理解していて、多くの人がつまずくような授業・課題・活動などを無理にさせることはありません。安心して、自分のペースで学んでほしいと思います。

何もしないと、さすがに通信制高校を卒業できない。勉強が進まないときは、まず学校に相談

基本的には普通に卒業できる通信制高校ですが、逆に卒業できないのはどういう場合なのか?

これは「本当に何もしない」というパターンです。

いくら内容がやさしくても、映像授業を見なかったり、課題に手をつけなかったりすると、単位を取れません。通信制高校のスタッフは生徒さんが卒業できるよう相談に乗ってくれますが、かわりに課題をやってくれるわけではないです。

ただ、勉強が進まないときは、「まずは学校のスタッフに相談」と覚えておくと良いです。

  • 「とりあえず、この課題だけでもやってみる?」
  • 「この映像授業は、流して見るだけで大丈夫だよ」

通信制高校のスタッフも「生徒さんになるべく卒業してほしい」と考えているため、今の状況で何ができるかをアドバイスしてくれます。

公立と私立の「退学率」を比べると、実は公立のほうが高く、私立のほうが卒業しやすい

卒業率が90%を超える通信制高校はたくさんありますが、通信制高校も全日制の高校と同じように、公立と私立があります。

国の文部科学省は通信制高校の「卒業率」をデータとして出していませんが、かわりに「退学率」を公開していて、卒業できるかの目安になります。

公立と私立の通信制高校で退学率を比べると下のようになっていて、公立のほうが退学率が少し高めです。

【公立・私立の通信制高校、退学率の比較】
(参考:文部科学省「高等学校通信教育の現状について:通信制課程の年度間退学者数」

年度 公立 私立
2016年(H28) 8.2% 6.2%
2017年(H29) 8.2% 5.9%
2018年(H30) 7.5% 5.8%

公立の退学率が私立に比べて高めなのは、私立よりも自主学習を重視するため。

公立と私立の年間学費を比べると、公立は3万円ほど、私立は10〜20万円ほどが目安。

公立は学費を抑えられるものの、職員によるきめ細かいサポートはなく、生徒さんが自分で勉強するのが基本です。

私立は公立の通信制高校より費用がかかるものの、勉強での不安や悩みが出てきたときは相談でき、スタッフも卒業できるよう手助けしてくれます。私立の通信制は全日制の私立高校に比べると高くないため、卒業できるか不安なら、考えるのもおすすめ。

管理人としても、自分だけで勉強を進めるのはなかなか大変なため、通信制高校は私立のほうが良いと考えています。

通信制高校からの進路・進学率は、大学・専門学校・就職それぞれ20%ほど。残り40%はゆっくり時間を取りたい人

続いて通信制高校からの進路について。

高校からの進路は大きく、大学・短期大学・専門学校・就職・その他(進路を決めない)に分かれます。

通信制高校と全日制高校を比べると、それぞれの進路の割合は下のようになっています。

【通信制高校・全日制高校の進路・進学率】
(2018年度時点。参考:文部科学省「高等学校通信教育の現状について」

進路 通信制高校 全日制高校
大学進学 18.0% 55.5%
専修学校
(専門学校など)
21.7% 16.4%
就職 19.6% 17.2%
その他 37.4% 5.4%

全日制の高校は大学進学が55%ほどなのに対して、通信制高校は大学進学がざっくり20%ほど。専門学校や就職も同じく20%ほどで、「大学・専門・就職の人が、それぞれ同じくらいいる」といえます。

通信制高校は、自由なのが大きなメリット。大学進学だけが正解ではなく、通信制高校ならその他の進路を選ぶのも普通です。

ちなみに通信制高校を卒業した人の中には、大学で勉強を頑張る人のほか、ファッション業界や芸能界で活躍する人やスポーツ選手などもいます。勉強以外の時間がたくさんあるため、自分のやりたいことや興味を追求することもできます。

通信制高校から大学に進学することはできるが、サポート校や家庭教師の併用がおすすめ

進路 通信制高校 全日制高校
大学進学 18.0% 55.5%

通信制高校から大学に進学する人は20%ほど。そもそも全員が大学を考えているわけではないため、全日制より低めの数字になるのは仕方ない面があります。

ただ、通信制高校の勉強だけで、大学受験の対策をするのは難しいです。

大学受験では入試があり、英語や数学などの試験で合格点を取る必要があります。通信制高校の勉強は上で紹介したように基礎が中心のため、大学受験に向けた勉強は追加で取り組む必要があります。

これを独学で進めるのは難しく、多くの人はサポート校や家庭教師を利用するのが一般的。

サポート校は通信制高校の勉強をサポートしてくれる塾のような存在で、大学受験に向けて利用する人も多いです。勉強だけでなく文化祭やイベントなどの企画もあり、通信制高校ながら学生生活も充実するため、考えてみるのも良いでしょう。ただし通信制高校とは別で費用はかかるため、予算に合うかは相談してみてください。

ちなみに通信制高校だからといって、大学入試でマイナス評価を受けることはありません。

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通信制は「その他」の割合が40%ほどと多い。ただし進路をじっくり考えるのも、ひとつの選択

進路 通信制高校 全日制高校
その他 37.4% 5.4%

通信制・全日制の進路では、「その他」の割合も確認しておくべき。全日制は5%ほどなのに対して、通信制では40%に近い数字。「卒業後の進路を決めず、フリーターやニートを選ぶ人もいる」ということです。

この数字をどう見るかは、正直なところ自分次第。

「卒業後に何もしない人が40%もいるのか・・。自分もそうなるのかな」と思う人もいますし、「結局は、自分がどうするか考えないとな」と感じる人もいます。また、「自分も卒業後のことはまだ考えていないし、その他に入るかもな」と思う人もいるかもしれません。

理解しておきたいのは、「進路を決めないことは、必ずしも悪いことではない」ということ。

もちろん親御さんは心配かもしれませんが、今の時代、価値観は本当にさまざま。「これが絶対に良い」という道はなく、逆に進学や就職を焦らずじっくり時間をとることで、良い選択につながることもあります。「自分はダメだ」と思わず、自分のペースで道を見つけてほしいと思います。

通信制高校は誰でも卒業でき、進路も大学を含めて幅広い!

通信制高校は卒業率が90%を超えている学校も多く、勉強する内容は基本が中心。進路も大学・短大・専門・就職と幅広く、自分の希望に合わせて選べます。進路を決めずに卒業する人もいますが、時間はまだたくさんあるはず。じっくり考えて決めましょう。

全日制とは違うところが多い通信制高校ですが、自由なのはとても大きな魅力。不安もあるかもしれませんが、さまざまな可能性にも目を向けて、楽しい学生生活を送ってくださいね。