通信制高校の公立と私立の違い:学費・卒業率・進学率・サポートなどから比較!

通信制高校は普通の高校(全日制高校)と同じように、公立と私立があります。ただ、これらの区別は知っていても、「何が違うのかよくわからない」ということは多いもの。

公立と私立の通信制高校でまず違うのは「学費」。公立は年間3〜5万円なのに対して、私立は年間10〜20万円。

金額だけで見ると公立のほうが良く思えますが、私立は「勉強を進めやすい・卒業しやすい・大学や専門学校へ進学しやすい・興味のあることを学べる」などのメリットがあり、考えてみるのもおすすめです。

ここでは公立と私立の通信制高校について、違いを比較しました。学校選びの参考にしてほしいと思います。

通信制高校の公立・私立の違いまとめ

まずは公立と私立の通信制高校で、データや学費を比較しました(2021年7月現在)。

公立 私立
学校数 78校 175校
運営 都道府県や市 民間の教育機関・企業
生徒数
(令和元年5月1日時点)
56,373人 141,323人
入学者の数
(平成30年度)
13,253人 60,432人
単位取得者の割合
(平成30年度)
45.7% 89.2%
退学率
(平成30年度)
7.5% 5.0%
卒業後の進路 大学(短大含む):11.2%
専門:11.7%
就職:21.9%
その他:55.2%
大学(短大含む):19.1%
専門:23.3%
就職:19.2%
その他:38.4%
学費の目安 授業料:1単位500円ほど
年間:3〜5万円ほど
授業料:1単位7,000〜10,000円ほど
年間:10〜20万円ほど
勉強の仕方 ほぼ自分で進める。
(つまずきやすい)
自分で進めるのが基本。
ただしサポートがある。
勉強の難易度 高校基礎レベル 高校基礎レベル
英語や数学など以外の
勉強・活動
文化祭や部活など 文化祭や部活に加え、
IT・福祉・アパレル・スポーツなど
専門分野を学べる。
サポート体制 あまりない。
あくまでも自主学習がメイン。
先生やスタッフに相談・質問できる。
カウンセラーがいる場合も。

※学費の目安以外の数字データは、文部科学省「高等学校通信教育の現状について(令和2年)」を参照。

学費の安さ以外は、公立より私立の通信制高校のほうが整っている

上の表を見ると、ハッキリ言って学費の安さ以外は、私立のほうが良いです。

公立の通信制高校は都道府県や市が運営しているため、何となく安心感はあります。ただ、その他の面では私立のほうが整っているため、卒業や進学などを考えるなら私立がおすすめ。ここから、表を踏まえてのポイントを解説します。

学費は公立のほうが安く、年間3〜5万円。私立は年間10〜20万円

公立 私立
学費の目安 授業料:1単位500円ほど
年間:3〜5万円ほど
授業料:1単位7,000〜10,000円ほど
年間:10〜20万円ほど

ひとことで公立・私立といっても、学費は学校ごとで違います。ただ、だいたいの目安として、公立は年間3〜5万円ほど、私立は年間10〜20万円ほど。学費をなるべく抑えるなら、公立がおすすめです。

ただ、私立の全日制高校は年間50〜100万円ほどかかることも多いため、これに比べると通信制高校の私立はお値打ち。多くのご家庭で払えない金額ではないと思われるため、考えてみるのも良いと思います。

また、親御さんの年収(両親の合計年収)が590万円未満の場合、「就学支援金」という国の制度を適用することで、さらに学費を安くできます。公立なら年間1〜2万円ほど、私立でも年間5〜10万円くらいの金額になるため、公立と私立、どちらも選べることは多いはずです。

(参考)通信制高校は就学支援金で学費が割引きに!制度の仕組み・内容を解説

卒業のしやすさは公立より私立。私立は卒業率が90%を超える学校も多い

公立 私立
単位取得者の割合
(平成30年度)
45.7% 89.2%
退学率
(平成30年度)
7.5% 5.0%

通信制高校は自由な時間が多い分、「勉強をサボって卒業できない・・」ということがよくあります。公立と私立どちらが卒業しやすいかは、上の「単位取得者の割合」と「退学率」を見るとわかります。

「単位取得者の割合」は、私立のほうが公立よりずっと高いです。これは「私立のほうが、卒業に必要な単位(74単位)をきちんと取れる人が多い」ということ。卒業して高卒資格を取りやすいのは、私立の通信制高校といえます。

また、「退学率」は、学校を途中でやめてしまう人の割合。公立のほうが私立より少し高い数字になっていますが、このことから「公立の通信制高校は、勉強でつまずきやすい」ということがいえます。私立の通信制高校はスタッフに相談や質問ができるサポート体制を整えているため、ある程度スムーズに勉強を進められます。

通信制高校は入っても、卒業できないと意味がありません。もちろん自分で勉強を進められる自信があれば公立も良いですが、「勉強、大丈夫かな」という場合は、私立のほうが安心です。

卒業後の進路は、公立だと就職がメイン。私立は就職に加えて、大学・専門学校に進む人も同じくらい

公立 私立
卒業後の進路 大学(短大含む):11.2%
専門:11.7%
就職:21.9%
その他:55.2%
大学(短大含む):19.1%
専門:23.3%
就職:19.2%
その他:38.4%

卒業後の進路も、公立と私立で差があります。

就職は公立が21.9%、私立が19.2%と同じくらい。ただ、大学・専門学校への進学率が違い、大学へ進学する人は公立が11.2%、私立が19.1%、専門学校へ進学する人は公立が11.7%、私立が23.3%となっています。

つまり、「就職を考えるなら公立・私立どちらでも良いけれど、大学・専門学校への進学は私立のほうがしやすい」といえます。

実際、私立の通信制高校は大学進学コースを用意していたり、プログラミング・アパレル・マンガ・看護師・介護士・美容師など、専門分野を学べるコースがあったりします。大学進学コースに入れば大学に行きやすくなるのは当然ですし、専門分野を高校のうちから学べば、専門学校へ行く可能性も高くなります。

通信制高校に入る前からその後の進路を考えるのは、難しいかもしれません。なんとなくでもやりたいことや大学進学を考えているなら、私立のほうが良いでしょう。「高校を卒業できれば、あとは就職でいい」という場合は、公立の通信制高校を考えるのも良いです。

勉強の難易度は同じくらい。ただし相談や質問ができるサポート体制は、私立のほうが充実

公立 私立
勉強の難易度 高校基礎レベル 高校基礎レベル
英語や数学など以外の
勉強・活動
文化祭や部活など 文化祭や部活に加え、
IT・福祉・アパレル・スポーツなど
専門分野を学べる。
サポート体制 あまりない。
あくまでも自主学習がメイン。
先生やスタッフに相談・質問できる。
カウンセラーがいる場合も。

公立と私立で、勉強のレベルは同じくらい。通信制高校は勉強が遅れてしまった人も多いため、公立・私立とも高校内容の基本レベルが中心です。頑張れば自分1人で進められますが、つまずいたときのために私立では先生やスタッフがサポートしてくれます。

また、私立の通信制高校はカウンセラーがいる場合もあり、メンタル的な悩みも相談することができます。

結論。通信制高校は私立がおすすめ。なるべく学費を安くするなら公立を

ここまで見てきたように、通信制高校は公立より私立がおすすめ。

学費は公立のほうが年間3〜5万円ほどとお値打ちですが、高校に入るのは卒業や進学が目的。私立に比べると単位を取れる人の割合や退学率、進学率の数字が低めで、公立の通信制高校は少し慎重に考える必要があります。

私立の通信制高校は学費が年間10〜20万円と上がりますが、体制は整っています。勉強のサポートをしてくれて、卒業や進学もきちんと考えられる学校が多いため、予算が合えば私立のほうが良いです。

正直なところ公立の通信制高校は、「もう少し体制を整えれば、もっと良い学校になるのにな」という印象。メリット・デメリットを考えて、どちらにするかを考えてみてほしいと思います。