通信制高校に入ると就職に不利?就職できない場合がある理由と、在学中に考えておくこと

通信制高校は普通の学校(全日制)と違う仕組みのため、就職を考えるときに「通信制高校って、就職で不利になるのでは?」と不安になることもあると思います。

実際のところ、「通信制高校だから不採用にする」という会社はほとんどありません。通信制高校の人でも全日制高校と同じくらい、普通に就職できます。

ただ、通信制高校からの就職を考えるときは前もって知っておくべきこともあるため、ここで解説します。

通信制高校の卒業でも就職で不利にはならず、変な目で見られることもない。ただしただぼんやり過ごすと、不利になることも

まず、高卒生を採用する企業は、学歴をあまり重視しません。求人に応募してきた人の高校が通信制なのか、偏差値がどれくらいかなどは、それほど気にしないことが多いです。

また、高卒生の求人募集をかける企業は、職場にも高卒の人が多いです。会社の人たちも学歴を気にしないため、特に「あの人、通信制高校の卒業なんだって」と偏見をもたれることもまずありません。「頑張ろうね」と気さくに接してくれることが多いです。

全日制 通信制
大学進学 55.5% 18.0%
専門学校など 16.4% 21.7%
就職 17.2% 19.6%
その他
(進路未決定など)
10.9% 40.7%

文部科学省による2018年の調査では上のように、全日制と通信制で就職する人の割合は同じくらい。むしろ通信制のほうが少し良く、高卒生の就職に出身高校の全日制・通信制は影響しないと判断できます(参考:文部科学省「高等学校通信教育の現状について(令和2年)」)。

ただ、通信制高校は全日制に比べて次の3つの力を伸ばしにくく、これが企業の面接を受けるときに影響することがあります。

【就職の面接に影響しやすい、通信高校生が伸ばしにくい力】

  • 初対面の人と会話する力(コミュニケーション力)
  • 自分のことだけでなく、相手・周りの人のことも考えられる力(協調性)
  • ものごとを続ける力(継続力)

家で勉強を進める通信制高校は、どうしてもほかの人と話したり、何かを一緒にしたりする時間が短め。スクーリングというキャンパスへの登校日があったり、人によっては週に何日かはキャンパスへ通って勉強したりする人もいますが、全日制に比べると人との関わりは薄くなりやすいです。

こうした生活が続くと、「人と話さなくていいや」と考えたり、自分のことだけを考えたりすることがあります。この傾向が強い人は通信制高校という部分でマイナス評価を受けなくても、就職で不利になります。

企業に就職するには、面接で合格する必要があります。マイペースな生活を続けていると面接でその影響が出てしまい、採用されにくくなる可能性があるのです。

働き始めると、どうしても人と関わることは必要。すると「これを先に終わらせば、先輩も楽だな」のように、周りの人のことも考える必要が出てきます。また、お給料は会社に入ったら何もせずもらえるわけではなく、毎日きちんと仕事をしないといけません。

通信制高校は、自由に時間を使えるのがメリット。ただ、それは就職でデメリットになることもあるため、気をつけておく必要があります。

通信制高校は学校にくる求人が少なく、就職のサポートが薄い場合も

普通の高校(全日制高校)には就職を希望する人向けに、高卒生を採用したい企業の求人が毎年あります。

高校を卒業したら就職したい人は、この求人に応募することでスムーズに入社先を見つけることができます。

通信制高校の場合こうした求人が少なく、通信制高校のスタッフによるサポートも薄い場合があります。

就職に強い通信制高校は、公式サイトでそのことをメリットとして打ち出しています。「高卒になれるなら、どこでもいいや」と考えず、スムーズに就職できそうな学校を選ぶことが大切です。

できれば専門学校や大学に進学するほうが、就職はしやすい

通信制高校からでも就職はできますが、できれば専門学校や大学に進学するほうが、就職できる可能性は高まります。大学は4年間で学費もかかるため、2年間で卒業できる専門学校を考えるのはおすすめ。

通信制高校から専門学校を卒業しても学歴は高卒になりますが、美容師・会計・ITなど、特定分野の専門的な知識を持っていることで就職しやすくなります。

専門学校の2年間なら勉強期間は短めで、英語や数学ではなく興味のあることを学ぶため、モチベーションも保ちやすいです。学費も2年トータルで200〜250万円ほどと、もちろん大きな額ではありますが、働き始めれば返せない金額ではありません。

最近は「働き始めてから役立つ勉強」がより重視されていて、専門学校の勉強も大学と同じように価値があります。もちろん追加の学費はかかってしまいますが、通信制高校で過ごしながら考えてみるのも良いでしょう。

通信制高校からの就職で気をつけること

ここからは通信制高校から就職を考えるときに、気をつけるべきことを5つ紹介します。

  • 通信制高校のスクーリングや行事になるべく参加して、人と関わることに慣れておく。
  • 空き時間でアルバイトをして、社会経験をしておく。
  • プログラミングなど、高卒でも就職しやすいスキルを身につける。
  • 専門学校や大学を調べて、進学も考えてみる。通信制高校のスタッフにも相談してみる。
  • やる気があるなら、高校生でも資格を取っておく(けっこう大変)。

通信制高校のスクーリングや行事になるべく参加して、人と関わることに慣れておく

人と関わるのが苦手なことは、企業の面接や働き始めてからの生活に影響しやすいです。そのため通信制高校での生活で、なるべくほかの人とコミュニケーションをとることが大切。

通信制高校は各地にキャンパス(校舎や学習センターとも呼ぶ)があり、スクーリングや文化祭などの行事があります。こうした機会を利用して、なるべく人と話すことや一緒に作業することを経験しておくと良いです。人付き合いに慣れておけば、企業の面接官にも「ずっと1人で過ごしていたわけではないんだな」ということが様子や雰囲気で伝わります。

また、最初は不安かもしれませんが、周りの通信高校生も実は同じように思っています。「誰かと話したい。友達になりたい」と思っている人は多いので、話してみれば親しくなったり、友だちになれたりすることも多いもの。少しずつコミュニケーションに慣れてほしいと思います。

空き時間でアルバイトをして、社会経験をしておく

通信制高校での自由な時間を活かして、アルバイトをするのも良いです。コンビニや飲食店で働けば必然的にコミュニケーションが必要になり、社会経験もできます。もちろんお給料ももらえるので、好きなことに使えます。

また、バイトなら基本は働く時間がメインのため、長く話し続けることは少なめ。最初は「いらっしゃいませ」や「ありがとうございます。ご注文はお決まりでしょうか」のような決まったフレーズから始めるため、会話の練習にもなります。

ただしアルバイトを始めるのは人によってはハードルが高いため、無理はしないようにしましょう。

プログラミングなど、高卒でも就職しやすいスキルを身につける

世の中にはさまざまな仕事がありますが、最近特に広まってきているのが「IT・プログラミング」。YouTubeなどで見たことがあるかもしれませんが、プログラミングができるようになるとあまり学歴は関係なく、オンラインで仕事ができることもあります。

また、IT企業もあまり人と話さずもくもくと働きたい人がいるのを理解していて、「コミュニケーションが苦手でも、プログラミングがしっかりできればいい」という会社もあります。

プログラミングのように、高卒でも就職しやすいスキルを見つけるのも、ひとつの道です。通信制高校によってはプログラミング教育に力を入れているところもあるため、こうした学校を考えてみるのもおすすめです。

(参考)プログラミングが学べる通信制高校!本格的にITを学べるオススメ4校を紹介

専門学校や大学を調べて、進学も考えてみる。通信制高校のスタッフにも相談してみる

上でも紹介しましたが、通信制高校卒でも就職できるものの、できれば専門学校や大学へ進学するほうが可能性は高まります。通信制高校での生活をする中で、専門学校や大学を調べてみるのも良いです。

まずはぼんやりで良いため、興味のあることや仕事にしたら面白そうなことをイメージしてみてください。「ゲームの仕事をしたいな」「美容に興味があるから、ネイルとかいいかな」のように考え始めると、だんだん専門学校や大学にも興味がわいてきます。

専門学校や大学は、働き始めると時間を取れず、なかなか入学しにくいです。就職を焦らず、今のうちに知識や技術を磨いておくのも良い選択肢といえます。家族や通信制高校のスタッフにも相談して、これからを考えてみてください。

やる気があるなら、高校生でも資格を取っておく(けっこう大変)

かなり難しいですが、やる気があれば高校生のうちに資格を取るのも良いです。

  • TOEIC(ビジネス英語の資格。高得点を取ると、就職に役立つことも)
  • ITパスポート(ITの基本資格)
  • 宅地建物取引主任者(不動産の仕事に必要)
  • 介護職員初任者研修(介護の仕事に必要)
  • 簿記検定(会計・経理の仕事に必要)

上のような資格は、高校生のうちから取ることができます。

ただ、資格を取るための勉強は、けっこう大変。通信制高校の勉強と並行して取り組むことになり、勉強を継続する力も必要です。もちろん費用もかかるので、よく考えて頑張れそうなら取得を目指してみてください。

通信制高校の卒業でも就職はできる!学生生活の間に、進路についても考えよう

通信制高校の卒業というだけで、就職が不利になることはありません。ただし通信制高校での生活は1人で過ごす時間が多く、どうしても人とのコミュニケーション機会が少なくなりがち。これは就職の面接に影響することもあるため、通信制高校での生活を送っている間に考えておくことが大切です。

前もって進路について考え、準備をしておけば、通信制高校は良い学校。自由な時間を自分のために使うことができるため、充実した高校生活になるはずです。